目的・概要
プラスチック・シンチレータと光電子増倍管(PMT)を使って粒子検出の原理を学ぶ。2枚のシンチレータを用いて、どのような測定ができるか考えて実行する。実験で行うことの例としては次のようなものが挙げられる。
- PMTからの信号をオシロスコープで確認
- 同時計測によりPMTからの信号が宇宙線ミューオンに由来するものであることを示す
- 検出器の信号をデジタル化して処理するNIMやCAMACといったエレクトロニクスの使い方を学ぶ
- 宇宙線ミューオンの性質を調べる
- ミューオンの飛来する角度分布を測定する
- ミューオンが検出器で静止し、崩壊して生じた電子を捕えることでミューオンの寿命を測定する
実験を行っていく中で、アナログ波形の整形や増幅、デジタル回路(論理回路)の組み方も学ぶ。場合によっては、回路を製作して検証する。アナログ回路による波形の処理は、物理数学で習うフーリエ変換やラプラス変換の大変良い応用例である。データはデジタル化した後、コンピュータに取り込むが、そこから先データから有益な情報を抽出するにはプログラミングを伴う解析が必要である。また実験結果の妥当性を直観のレベルを超えて検証するには、実験環境をできるだけ正確に再願してシミュレーションする必要がある。
参考スライド: 20130916-宇宙線検出.pdf, 20130924-CAMAC.pdf
宇宙線ミューオン
測定内容
宇宙線ミューオンの角度分布
ミューオンの寿命測定
ミューオンがシンチレータに入射して静止した場合の信号を詳細に観測することにより、静止後にミューオンが電子とニュートリノ2つに崩壊した時に生じる電子のシグナルを観測する。手順としては
- ミューオンがシンチレータに入射して静止したと思われる事象を集める
そのような事象に対してシンチレータ+PMTからの波形を数μsに渡って記録する
波形の記録には100 MHzのサンプリングADCを使用する(最大1024サンプル、10.24 μs)
- 各事象に対して波形を解析して2つのピークが見える事象を選ぶ
2つのピークの検出された時間差よりミューオンが崩壊した時刻Δtを求める(入射した時刻をt=0とする)
全事象を解析し、Δt分布のヒストグラムを作り、これから寿命を求める
実験に使う道具と手法
プラスチック・シンチレータと光電子増倍管
デジタル回路と信号処理
信号波形の処理
PMTからの出力波形は数nsと非常に短いパルスになっている。今回はサンプリングADCで波形を記録して、2つのシグナルの検出された時間差を求める方針のため、PMTからの波形を引き延ばして使用する。基本的には積分回路を通して、ある時定数で減衰するような波形を作るが、積分回路の後に微分回路(CR)を入れてしまったためバイポーラ出力になっている。 回路の伝達関数、短い矩形信号に対する出力波形を求める。
A/D変換
データ収集用プログラム
ライブラリ
- データ収集に必要なデータ構造等
- 他のコードに依存しない
- CAMACコントローラにアクセスするためのコードを含む
- libCamacDaq.soを使用
- サーバーとして他のDAQプロセスからデータを受け取ることが可能
- 収集したデータをROOT形式に変換して保存
- オンライン・モニタ
- 複数のthreadを使ってデータを処理
- libCamacDaq.so及びROOTにリンク
実行可能プログラム
- daq_server.exe
- startdaq_wf.exe
波形解析の解析
daq_server.exeで収集したデータは、/nfs/space1/camac/DAQ/DaqServer/に保存される。デフォルトではdaq.rootという名前になっているため、データを取った後で適当に別名に変更する
* データ収集条件 * |
ファイル名 |
シンチレータ3番からの波形(2013/12/26に開始) |
daq_cosmic_sci3wf_20131226_22dB_*.root |
データを解析するに当たっては、解析作業用のディレクトリを作成すると便利。ここでは、この作業用ディレクトリの下に以下のファイル及びサブ・ディレクトリを準備したとして進める。 > ls analysis/
*ファイル/ディレクトリ名* |
*用途* |
scripts/ |
良く使うコマンド等をスクリプト(.sh)にまとめたもの |
macros/ |
ROOTで解析をするためのマクロ |
figures/ |
ROOTで作成した図のファイル(.png, .eps, .pdf等) |
.rootrc |
ROOTの設定ファイル |
rootlogon.C |
ROOTを起動したときに自動的に読み込まれるマクロ |
ROOTファイルの中身
ROOTで波形を確認