卒業研究2016

シリコン検出器

2015年度の続き。 シリコン・ウェハーを使って荷電粒子検出器を作る。半導体のpn接合を粒子検出器として動作させるための仕組みを理解した上で、実際に作った装置がどのように動作しているかを、特性を調べるための測定方法を考えつつ進めていく。これまでに、高い逆バイアスを掛けるのが困難であることが分かった。そのため、電磁場の分布を計算して、局所的に電場が大きく放電が起こり易い部分がないか調べ、製作過程で工夫をできることがないか考える。

APDの特性

2015年度の続き。 高感度の光検出器として光電子増倍管(Photomultiplier Tube, PMT)が有名だが、それよりも安価なAvalanche Photo-Diode (APD)の性能を調べる。どれくらい感度があるか、バイアス電圧や温度による性能の変化について調べる。測定を行うにあたって、APDを駆動して信号を増幅するための回路を自作してアナログ信号の増幅や整形の仕組みを学ぶ。 シンチレーターとAPDを組み合わせて荷電粒子検出器として動作させる。

FPGAを用いた小型光検出実験

これまでNIM、CAMAC、VMEを用いて行っていた光検出実験を、FPGAボード上に機能を実装してコンパクトな実験に作り替える。
シリアルポート通信

飛跡検出のためのパターン認識

粒子の飛跡を測定するためには、高精度の位置分解能をもった検出器を大量に用いて粒子が通った飛跡上の点をできるだけ多く測定する。すると、多数の点(位置座標)が得られる。複数の粒子が同時に発生して検出器に入射し、かつ検出器自体にノイズによって生じた測定点が含まれる場合、粒子の飛跡を求めるためには通常二つの段階に分けて考える。

パターン認識

多数の点の中から同じ飛跡に属すると点を選んでくる。

飛跡パラメータの計算

飛跡に属する点の集まりが決まったら、それらの点を全て通る飛跡として最適なものを求める。このためには通常、直線や螺旋といった飛跡モデルを仮定して、そのモデルの範囲内で最適なパラメータを求める。

パターン認識とパラメータの推定(最小二乗法)を同時に行うものとしてKalman filterと呼ばれる方法があり、多くの実験で用いられている。最近の深層学習ブームに乗って、ニューラルネットワークを飛跡のパターン認識に応用できないか試してみる。ニューラルネットは計算が簡単なため、実行速度も速く処理の並列化もKalman filterよりも容易であるはずなので、Kalman filterよりも早く並列化し易いものが可能となるかもしれない。

NeuralNetTracking2016

参考文献:
R. Mankel, Rep. Prog. Phys.67 (2004) 553-622
R. Fruehwirth, NIM A 262, 2-3 (1987) 444-450
研究室ミーティング資料2016.12.02

ジェットの性質とフレーバー同定

高エネルギー・ハドロン衝突は、クォーク・グルーオン同士の散乱とみなすことができる。ハドロン散乱を理解する上で必要となる概念を学ぶ。

ハドロン散乱のシミュレーション(Event generator)では、これらを考慮した上で実験で得られるのと同様に多数の事象として計算結果を出力してくれる。Event generatorを使ってジェット生成反応を調べて、上であげた特徴を検証する。また、LHCで実際に測定を行う上でこれからの課題でもある高エネルギーのジェットに対するフレーバー同定の方法と性能を、特にbクォークとcクォークの同定方法について調べる。

ソフトウェアのインストールと走らせ方は、EventGeneratorExampleを参照。 参考文献:
  T. Plehn, LHC physics

宇宙線ミューオン検出のシミュレーション

複数のシンチレータを用いて宇宙線に含まれるミューオンを検出する実験をシミュレーションで再現してみる。宇宙線に含まれるミューオンの素性を調べたり、ミューオンの崩壊をより詳細に調べることが可能かどうか、またそのための実験方法を調べる。

参考文献:
研究室ミーティング資料2016.12.02

LabProjects2016 (最終更新日時 2018-01-31 07:26:43 更新者 TakanoriKono)